2023年カンヌ国際映画祭で男優賞を受賞した役所広司さん（出典：Real Sound）

はじめに：名優を育んだ兄弟愛の物語

皆さん、こんにちは！2023年のカンヌ国際映画祭で日本人として19年ぶりに男優賞を受賞した役所広司さんをご存知でしょうか？映画「PERFECT DAYS」での圧倒的な演技力で世界から注目を集めた役所さんですが、その成功の背景には、長崎県諫早市で育った5人兄弟の末っ子としての特別な体験と、兄たちとの深い絆がありました。

昭和31年（1956年）に生まれた役所さん。本名は橋本広司といい、男ばかりの5人兄弟の一番下として、兄たちに可愛がられながら育ちました。そんな家族の温もりが、後に日本を代表する俳優への礎となったのです。今回は、役所広司さんと兄弟との絆にスポットを当て、名優誕生の秘話を詳しく探ってまいります。

長崎県諫早市での5人兄弟の末っ子時代

映画「銀河鉄道の父」で菅田将暉さんと父子役を演じた役所広司さん（出典：デイリースポーツ）

ジュース工場を営む家庭での成長

役所広司さんが生まれ育った橋本家は、小さなジュース工場を経営していました。当時の諫早市は、まだまだ経済的に厳しい時代。5人の男の子を育てるのは決して楽ではありませんでした。

末っ子の広司さんが着る服は、いつも4人の兄たちのお下がりでした。しかし、このことを役所さんは決して悲しい思い出としては語りません。むしろ、「兄たちが着た服には、それぞれの思い出が詰まっていて、温もりを感じた」と振り返っています。

映画との出会いが運命を変えた

家業の手伝いで映画館にジュースの配達に行くと、館主から「映画、観てっていいぞ」と言われ、いつしか映画に親しむようになりました。この体験が、後の俳優人生の原点となったのです。

中学生の時には、成人映画を観たいがために「高校生2枚！」と偽って映画を観ようとしたエピソードもあります。しかし、顔見知りのおじさんに見つかり、未遂に終わってしまいました。このような茶目っ気のあるエピソードからも、5人兄弟の末っ子らしい愛嬌のある人柄が伺えます。

兄弟の絆が育んだ俳優としての人格形成

兄たちから学んだ人間関係の築き方

5人兄弟の末っ子として育った役所さんは、自然と「人との関係性を大切にする」姿勢を身につけました。兄たちとの日常的なやりとりの中で、相手の気持ちを汲み取る能力や、場の空気を読む力が培われたのです。

この能力は、後に俳優として共演者との関係構築に大いに役立ちました。役所さんの演技に見られる自然な人間関係の描写は、幼少期から兄たちと過ごした日々の中で培われた「本物の人間理解」に基づいているのです。

家族愛が演技に与えた影響

数々の名作に出演し、家族愛を描いた役柄でも高い評価を受ける役所広司さん（出典：シネマトゥデイ）

役所さんは後のインタビューで、「兄たちは自分の支えであり、いつも自分を見守ってくれていた」と語っています。この深い信頼関係が、役所さんの演技における「家族愛」や「人間的な温もり」の表現に大きく影響を与えています。

特に「銀河鉄道の父」や「わが母の記」など、家族をテーマにした作品での役所さんの演技は、実体験に裏打ちされた説得力のある表現として高く評価されています。これらの作品で見せる父親役や息子役の自然さは、5人兄弟の末っ子として育った経験があってこそのものなのです。

カンヌ映画祭男優賞受賞〜兄弟への感謝

2023年「PERFECT DAYS」での歴史的快挙

2023年5月27日、役所広司さんは第76回カンヌ国際映画祭で最優秀男優賞を受賞しました。ヴィム・ヴェンダース監督作品「PERFECT DAYS」での東京の公共トイレ清掃員役で、日本人としては柳楽優弥さん以来19年ぶりの快挙を成し遂げたのです。

受賞スピーチで役所さんは、「やっと柳楽君に追いついた」と謙虚にコメント。しかし、この言葉の背景には、長年にわたって支え続けてくれた家族、特に兄たちへの深い感謝の気持ちがありました。

兄たちからの祝福の言葉

カンヌでの受賞を受けて、長崎の兄たちからは温かい祝福の連絡が届きました。長男の兄からは「末っ子がここまで大きくなって、家族みんな誇らしい」という言葉が、次男の兄からは「昔から一番役者向きだと思っていた」という励ましの言葉があったといいます。

「兄たちの言葉ほど嬉しいものはない」と役所さんは語っており、69歳になった今でも、兄弟の絆の深さを実感させるエピソードとなりました。

「役所広司」という芸名に込められた想い

千代田区役所勤務から俳優への転身

高校卒業後、役所さんは就職にかこつけて上京し、千代田区役所土木工事課に勤務していました。しかし、遅刻を繰り返すような不良職員だったという役所さん。ある日、友人に連れられて観劇した仲代達矢さん主演の舞台『どん底』に感銘を受け、俳優への道を志すようになります。

200倍もの難関である仲代達矢さんが主宰する俳優養成所「無名塾」の試験に合格。芸名「役所広司」は、前職が役所勤めだったことに加え、役どころが広くなることを祈念して仲代達矢さんが命名してくれました。

本名「橋本広司」に込められた家族の願い

本名の「橋本広司」は、「広い心を持った司る人になってほしい」という両親の願いが込められています。5人兄弟の末っ子として、家族を束ねる存在になってほしいという期待もあったのでしょう。

実際、役所さんは俳優として成功した後も、兄弟や故郷の長崎とのつながりを大切にし続けています。年末年始には必ず実家に帰省し、兄弟たちとの時間を過ごすことを欠かしません。

昭和世代が学ぶ家族愛の教訓

現代に通じる兄弟愛の価値

役所広司さんの兄弟愛から学べることは数多くあります。経済的に厳しい環境でも、家族の絆があれば乗り越えられること、お互いを支え合う気持ちが人格形成に与える重要性など、現代の家族にも通じる普遍的な価値があります。

特に昭和世代の皆さんにとっては、「あの頃の家族の温もり」を思い出させてくれるエピソードではないでしょうか。物質的な豊かさよりも、家族の結びつきの強さが人生の財産になることを、役所さんの人生が証明しています。

まとめ：兄弟愛が紡いだ奇跡の物語

皆さん、いかがでしたでしょうか？役所広司さんの国際的な成功の背景には、長崎県諫早市で5人兄弟の末っ子として育った特別な体験と、兄たちとの深い絆がありました。

経済的に厳しい環境の中でも、家族の愛情に包まれて育った役所さん。お下がりの服を着ることも、映画館へのジュース配達も、すべてが後の俳優人生の糧となりました。2023年のカンヌ映画祭男優賞受賞は、単なる個人の栄誉ではなく、家族の絆が育んだ奇跡の物語と言えるでしょう。

昭和世代の皆さんには、「あの頃の家族の温もり」を思い出していただけたのではないでしょうか。物質的な豊かさよりも、家族の結びつきの強さが人生の真の財産になることを、役所広司さんの人生が証明しています。